101周年記念
34/211

of Moralogy」であり、千葉県柏市に位置する公益財団法人優秀な社員による経営管理に完全に任せているのである。「子曰く:知者は惑わず勇者は懼れず」。生田産機工業三代目社長の生田泰宏はまさに知勇兼備の賢者である。彼のグローバル的な戦略的思考、成功するまで諦めようとしない職人のDNA、そして生田家で受け継がされている大胆なチャレンジ精神とイノベーション経営力、この三つをもって、生田泰宏は二〇年にも満たない短い時間で、生田産機工業という小さな町工場を、世界の舞台で活躍するグローバルニッチ企業へ成し遂げたのだ。筆者との会話のなか、生田泰宏は何度も「モラロジー研究所」と「日本道経会」に言及した。この二つの組織はどのようなものか。「モラロジー研究所」の英語名称は「The Institute である。一九二六年、著名な法学者であり歴史学者でもある廣池千九郎(一八六六〜一九三八)により提唱され、倫理道徳の研究と、これに基づく社会教育を推進するという目的で創立された。日本の「道徳教育」の提唱と普及をつうじて、「日本人魂の再生」を実現しようとするものであるという。現在、「モラロジー研究所」は日本各地で計十二の地方支部を有しており、生田産機工業が加入したのは、京都市上京区に位置する「モラロジー研究所京都支部」である。「日本道経会」は「モラロジー研究所」の関連機関であり、「モラロジー研究所」とともに道徳教育を普及するほか、会員企業に対して経営や管理などの諸方面で専門指導と支援サービスを提供しており、生田産機工業もその会員企業である。では、生田産機工業はどのようにして、この二つの組織と出会い、加入したのか。生田家と生田産機工業から言えば、この二つの組織の存在はどのような意味があるのか。「確かに第二次世界大戦の終戦後、祖父の生田捨吉は、同じく企業経営者の友人を介してモラロジー研究所という組織を知りました。話によると、その友人に誘われて一度モラロジー研究所の公開講座を聞きに行ったそうです。当時の講座内容とは、自分自身の道徳育成を重視するのだけでなく、身近の人、そして子供たちに対しても道徳教育を重視すべきだといった内容だったようで、祖父は感銘を受けたそうです。当時は終戦したばかりですから、アメリカが率いる連合国軍の占領と統治のもと、日本社会には次第に大きな変化が現れていました。とくに人々の考え方と価値観、西洋文化から多大な衝撃を受けていたのです。祖父は典型的な伝統を受け継いだ日本人ですから、すぐさまモラロジー研究所の虜となっていました。道徳教育と道徳科学をさらに深く学ぶために、モラロジー研究所に加入し、時間の許す限り公開講座に足を運んで熱心に勉強し、時々父をも連れて参加していたようです。そして父も後には伏見区モラロジー事務所の責任者となり、生田家の家訓のように代々モラロジーに基づく累代教育をしていくようになりました。今、私は日本道経会の担当理事として、そして京都支部の代表幹事として、京都支部会の経営講座の運営を行っています」長い引用となったが、上記した生田泰宏の話から、モラロジー研究所と日本道経会は生田家の事業承継において重要な意味を持ち、とりわけ生田家の後継者教育に大きな役割を果たしていることがわかる。まず、モラロジー研究所と日本道経会は基本的に生田家の親子三代がともに参加する社会的組織である。実際に生田家にとって、これは世代間の経営思想と経営理念を効果的に統合する重要な意味を持っている。そして世代間のコミュニケーションを促進する橋渡しの役割も果たしていると言えよう。次に、モラロジー研究所と日本道経会の支部活動には現地の多くの企業が積極的に参加しており、会員企業の経営者たちと後継者たちは直接的に、あるいは間接的に教育し、監督できる作用をもたらしている。モラロジー研究所と日本道経会はそもそもセミナーや公開講座などを通じて道徳教育を行っているため、無論社会教育の効果がある。実際に二つの組織の内部では、一般部門と青年部門に分かれているため、青年企業家または若い後継者らが互いに比較的に自由に切磋琢磨し、また互いに理解し合いながら経営実践の交流もでき、仲間同士の共同成長を促す効果もある。それと同時に、親世代の先輩経営者たちも二つの組織に加入し、活動に参与しており、若い世代の経営者や後継者たちへの指導・監督という作用も果たしている。若い世代の経営者や後継者たちはしっかりしていなければ、先輩五、後継者教育:生田家の事業承継における最重要要素 034

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る